この記事は Sara N-Marandi による Android Developers Blog の記事 "What’s new in Android Privacy" を元に翻訳・加筆したものです。詳しくは元記事をご覧ください。
人々は、自分にとって最も大事な個人情報や機密情報を信頼して託すことができる OS とアプリを求めています。プライバシーは、Android の製品理念の中核です。Google I/O の「What’s new in Android Privacy」セッションでお話しした通り、Android 12 は、プラットフォームをさらにいっそうプライベートなものにすることで、この既存の基盤を広げ続けています。
このリリースによって、ユーザーは、アプリにアクセスされるデータに関する透明性を確保でき、かつ、シンプルなコントロールで情報に基づく選択ができるようになります。Android は、アプリが自らが提供する機能で必要なデータにのみアクセスするように、アクセス権限のスコープを小さくすることにも投資しています。ユーザーのプライバシーを保護するために私たちが Android 12 で行った、これらの重要な変更について見てみましょう。
プライバシー ダッシュボード:ユーザーの皆さんからはアプリがどのようなデータを利用しているのか知りたいというご要望をよく受けています。新しいプライバシー ダッシュボードでは、位置情報、マイク、カメラへの過去 24 時間のアクセス記録を、シンプルでわかりやすいタイムラインで確認できます。また、Android 12 に搭載された新しいパーミッション インテント API により、アプリのデータ使用に関するより詳細な情報を共有することができます。プライバシー ダッシュボードは、Beta 2 から利用可能になります。
デベロッパーの皆さんには、現在のアプリやゲームのコードを見直し、サードパーティ製 SDK を含め、データへのアクセスの必要性を把握し、すべてのアクセスが正当な利用方法か確認することをお勧めします。これをサポートするために、Android 11 にデータアクセス監査 API を追加し、現在のデータアクセスを簡単に監視できるようにしました。この API を使用してコードのどの部分が個人データにアクセスしているか追跡することで、コードのマッピングを解明できます。プライバシー ダッシュボードは Android 12 Beta 2 でお試しいただけます。
図 1.プライバシー ダッシュボードと過去 24 時間の位置情報アクセス タイムライン
マイクおよびカメラ インジケータ:Android 12では、マイクとカメラへのアクセスに透明性を持たせています。今後は、アプリやゲームがマイクやカメラの映像にアクセスしたことを、ユーザーはリアルタイムで確認できます。また、ユーザーは、クイック設定で自分のデータにアクセスしているアプリを確認でき、不審なアクセスがあった場合は、アプリの許可ページに素早く移動して、許可を取り消すことができます。
デベロッパーはマイクやカメラの使用方法を見直し、アプリやゲームからの予期せぬアクセスを積極的になくす必要があります。例えば、ユーザーがアクセスを必要とする機能をクリックする前に、アプリがこれらのセンサーにアクセスしないようにしてください。マイクとカメラ インジケータは、Android 12 Beta 2で試すことができます。
図 2.マイクおよびカメラ インジケータとトグル
マイクおよびカメラ トグル:カメラにステッカーを貼ったり、携帯電話にオーディオブロッカーを取り付けたりしている人を見たことがあるかもしれません。Android 12では、ユーザーがアプリによる端末のマイクとカメラへのアクセスを迅速かつ簡単に遮断できる 2 つの新しいコントロール機能を導入します。ユーザーの安全性を確保するため、緊急通話は対象外となります。
ユーザーがセンサーをオフにしているにもかかわらず、アクセス許可を得ているアプリまたはゲームがマイクやカメラにアクセスを試みると、そのアプリやゲームの機能を使用するためにはセンサーをオンに戻す必要があることを知らせるメッセージが表示されます。アプリがアクセス権限のベスト プラクティスに従っている場合、トグル状態を組み込むために特別なことをする必要はありません。マイクおよびカメラトグルは、Beta 2 でお試しいただけます。
おおよその位置情報:過去 2 回のリリースにおいて、私たちは位置情報へのアクセス権限を細分化しました。まず、バックグラウンド アクセスとフォアグラウンド アクセスを分離しました。次に、「今回のみ」のオプションを追加して、バックグラウンド位置情報へのアクセスをさらに制限できるようにしました。ユーザーは積極的にこれらのコントロール機能を活用し、より頻繁に選択するようになっています。このオプションが与えられたユーザーは約 80% の割合で、フォアグラウンドの位置情報へのアクセス許可を選択しません。
Android 12 では、ユーザーが自分の位置情報の共有方法と共有先をさらにコントロールできるようになり、アプリやゲームへ提供される位置情報の精度について、「おおよその位置情報」を選択することで、明確に選択できるようになります。
デベロッパーの皆さんは、ご自身のアプリやゲームの位置情報の利用方法を確認し、その機能を提供するにあたってユーザーの正確な位置情報が必要ない場合は ACCESS_COARSE_LOCATION をリクエストすることをお勧めします。また、ユーザーが位置情報の精度を下げることも想定しておく必要があります。ユーザーがおおよその位置情報を選択した場合でも、アプリが動作することを確認してください。おおよその位置情報は、Beta 1で試すことができます。
ACCESS_COARSE_LOCATION
図 3.「おおよそ」と「正確」の選択肢がある位置情報アクセス権限リクエスト ダイアログ
クリップボード読み取り通知:クリップボードにコピーされたコンテンツには、ユーザーがよくコピーするメール、住所、パスワードなどの機密情報が含まれている可能性があります。Android 12 では、アプリがクリップボードから読み取るたびに、ユーザーに通知します。アプリが getPrimaryClip() をコールするたびに、画面下部にトーストが表示されます。クリップボードのデータが同じアプリから送られてきた場合は、トーストは表示されません。初回のコールで getPrimaryClipDescription() をチェックして、クリップボードのデータのタイプを調べることで、アクセスを最小限に抑えることができます。推奨されるベスト プラクティスは、ユーザーがアクセスの理由を理解している場合にのみ、クリップボードにアクセスすることです。クリップボード読み取り通知は Beta 2 でお試しいただけます。
getPrimaryClip()
getPrimaryClipDescription()
近くのデバイスを探す権限:Android 12 では、位置情報を使わない「近くのデバイスを探す権限」に新しいランタイムアクセス権限を追加することで、データへのアクセスを最小限にします。これまで、時計などのアプリやヘッドフォンを使うアプリやゲームは、ペアリングする近くの Bluetooth デバイスをスキャンするために、位置情報へのアクセス権限をリクエストしていました。これが原因で混乱が生じ、必要ではないときに位置情報データへのアクセス権限を与えてしまう、というお声がありました。Android 12 をターゲットとするアプリでは、デバイスをペアリングするなどの利用方法で、正確な位置情報へのアクセス権限から、近くのデバイスの検出を切り離すことができます。そのためには、新しい BLUETOOTH_SCAN 権限を使用して、usesPermissionFlags=neverForLocation を宣言します。デバイスがペアリングされると、アプリは新しい BLUETOOTH_CONNECT アクセス権限を使用して、そのデバイスと通信できます。なお、位置情報を取得するために Bluetooth スキャンを使用するアプリやゲームは、引き続き位置情報へのアクセス許可が必要です。近くのデバイスを探す権限は、Beta 1 で試すことができます。
BLUETOOTH_SCAN
usesPermissionFlags=neverForLocation
BLUETOOTH_CONNECT
アプリの休止状態(ハイバネーション):昨年、Android に権限の自動リセット機能を追加しました。アプリが一定期間使用されなかった場合、Android が自動的に、ユーザーのデータにアクセスできないようにしますが、過去 14 日間で、850 万のアプリの権限がリセットされました。今年、権限の自動リセットをさらに発展させ、長期間使用されなかったアプリを自動的に休止状態に切り替え、デバイスのストレージ容量、パフォーマンス、安全性をより改善する機能を導入します。システムは、ユーザーが以前に許可した権限を取り消すだけでなく、アプリを強制停止してメモリやストレージ、その他の一時リソースを解放します。ユーザーは、アプリを起動するだけで、そのアプリを休止状態から戻すことができます。アプリの休止状態は Beta 1 でお試しいただけます。
Android 12 には、今までで最も野心的なプライバシー リリースが含まれています。これまで、デベロッパーの皆さんへの影響を考慮しながら、プライバシーを最優先にしたプラットフォームを構築するために、デベロッパー コミュニティの皆さんと連携してきました。皆さんからのフィードバックとご支援にお礼申し上げます。今回の変更点については、デベロッパー Web サイトをご覧ください。
Reviewed by Yuichi Araki - Developer Relations Team and Tamao Imura - Developer Marketing Manager, Google Play