この記事は Florina Muntenescu による Android Developers Blog の記事 "What's new in Jetpack" を元に翻訳・加筆したものです。詳しくは元記事をご覧ください。
Android Jetpack は、デベロッパーがベストプラクティスに従って、ボイラープレート コードを削減し、Androidのバージョンやデバイス間で一貫して動作するコードを書くためのライブラリ、ツール、ガイダンスを統合したものです。現在、Google Play の トップ 1000 アプリのうち 84 % がJetpack を利用しています。この記事では、Jetpack の最新のアップデートをまとめてご紹介します。
CameraX ライブラリは、デバイス固有の互換性の修正や回避策を含む、OS のバージョンを超えてカメラ機能にアクセスするための統一された API サーフェスを提供します。最新の改良点は、露出補正のサポートや、カメラの状態や機能に関するより詳細な情報へのアクセスなど、多数寄せられた機能要望にお応えした内容となっています。さらに、FPS レンジなどのカメラ設定を、カメラを動作中に Camera2Interop 経由で変更できるようになりました。また、ハイダイナミックレンジのプレビュー、ズーム比の調整、Android の Do Not Disturb モードへの対応など、最新のデバイスや OS の機能にも対応しています。特に重要なのは、パフォーマンスへの取り組みで、特に古いデバイスにおいて、画像の取り込みや初期化が高速化されています。
Hilt は、Dagger 上に構築されている、Jetpack 推奨の依存関係注入ソリューションです。安定版への移行の一環として、Hilt の ViewModel サポートはコア Hilt Android API に移され、SavedStateHandle が ViewModelComponent で利用可能なデフォルトの依存関係として追加されています。また、Hilt は Navigation および Compose と統合されています。適用範囲を宛先またはナビゲーション グラフ自体とした注釈付き Hilt ViewModel を取得できます。複数のデベロッパーの皆さんが、すでにアプリで Hilt を使い始めています。そのケーススタディは、こちらのブログ記事 (英語) をご覧ください。
ViewModel
SavedStateHandle
ViewModelComponent
Paging ライブラリを使用すると、データの小さなチャンクをロードおよび表示してネットワークとシステムのリソース消費を改善できます。このリリースでは、全体を Kotlin で書き直すことによって コルーチンおよび Flow を完全にサポートし、RxJava および Guava プリミティブを使用した非同期ロード、リポジトリおよびプレゼンテーション層の全体的な改善を提供します。
3.0 リリースでは Paging 2 と比べて使い勝手が大幅に改善され、書き直しは部分的および段階的移行を念頭に計画されたため、デベロッパーの皆さんはご自身のスケジュールに合わせて移行できます。詳細および実践については、Paging 3.0 のドキュメントおよび Paging 3.0 のCodelab をご覧ください。
Jetpack のレイアウト設計を柔軟に行うためのシステム ConstraintLayout、モーションおよびウィジェット アニメーションの管理を目的とした MotionLayout は現在安定版です。MotionLayout では、折りたたみデバイス、イメージ フィルタ、モーション エフェクトがサポートされています。デザインツールの新機能について詳細は、こちらの Google I/O セッションをご覧ください。
ConstraintLayout
MotionLayout
Security Crypto ライブラリを使うと、ファイルや SharedPreferences を安全かつ簡単に暗号化できます。SharedPreferences を暗号化するには、EncryptedSharedPreferences オブジェクトを適切なキーとスキームで作成し、このオブジェクトを標準の SharedPreferences オブジェクトのように使用します。
SharedPreferences
EncryptedSharedPreferences
val prefs: SharedPreferences = EncryptedSharedPreferences.create( context, "prefs_file_name", mainKey, prefKeyEncryptionScheme = AES256_SIV, prefValueEncryptionScheme = AES256_GCM,)// Use the resulting SharedPreferences object as usual.prefs.edit() .putBoolean("show_completed", true) .apply()
context,
"prefs_file_name",
mainKey,
prefKeyEncryptionScheme = AES256_SIV,
prefValueEncryptionScheme = AES256_GCM,
)
// Use the resulting SharedPreferences object as usual.
prefs.edit()
.putBoolean("show_completed", true)
.apply()
この1年間、Fragment ライブラリは内部の実装を整理して明文化されていない動作を削減するための大規模な変更を行いました。これにより、デベロッパーの皆さんは、アプリやゲームのベスト プラクティスに倣って信頼できるテストを記述しやすくなりました。これは、Navigation で複数のバックスタックをサポートするなど、将来的なライブラリの改善のための基礎となるもので、厳密化された API に対応するためには、いくつかの作業が必要になるかもしれません。実際に、ライブラリを更新した後のテストには細心の注意を払う必要があります。特に注意が必要なケースについては、Fragmentのリリースノートをご確認ください。
最新リリースでは、ActivityResult の統合も行われ、フラグメントから Activity の結果を登録することが可能になりました。 Fragment には、柔軟性があまり高くない onAttachFragment メソッドの代わりに、新しい FragmentOnAttachListener インターフェースも追加されています。Fragment または FragmentActivity でこのメソッドを上書きする既存のコードは引き続き機能しますが、新しいコードが柔軟性の高くない手法を誤って採用するのを防ぐため、onAttachFragment を非推奨にしました。
onAttachFragment
FragmentOnAttachListener
Fragment
FragmentActivity
// Obtain the fragment manager.May be a childFragmentManager,// if in a fragment, to observe child attachment.val fm = supportFragmentManagerval listener = FragmentOnAttachListener { fragmentManager, fragment -> // Respond to the fragment being attached.}fm.addFragmentOnAttachListener(listener)
// if in a fragment, to observe child attachment.
val fm = supportFragmentManager
val listener = FragmentOnAttachListener {
fragmentManager, fragment ->
// Respond to the fragment being attached.
}
fm.addFragmentOnAttachListener(listener)
ライブラリの機能が完成すると、安定化のためにベータ版に移行します。現時点では、重要な問題やコミュニティからのフィードバックに対してのみ、API を変更しています。
DataStore は、シンプルで非常に有用な API サーフェスを維持しながら、SharedPreferences の欠点を解決する堅牢なデータ ストレージ ソリューションを提供します。DataStore は、Flow と RxJava による Kotlin のコルーチンのようなベストプラクティスをサポートします。DataStore では、Preference DataStore 経由でキーと値のペアを格納したり、Proto DataStore 経由でプロトコル バッファがバックアップする型付きオブジェクトを格納できます。さらに、Kotlin Serialization のような独自のシリアル化ソリューションをプラグインすることもできます。
アルファ版ライブラリは、現在開発中のライブラリです。API の追加、変更、削除が行われる可能性がありますが、ライブラリのコンテンツはテストされていますので、高い機能性を備えています。
AppSearch は高性能で機能豊富なフルテキスト検索機能を提供する新しいデバイス内検索ライブラリです。SQLite と比較すると、AppSearch は複数の言語をサポートし、クエリ結果のランク付けがシンプルで、大きなデータセットのインデックス作成や検索の遅延がより少なくなります。
AppSearch 1.0.0-alpha01 は LocalStorage をサポートしています。これによって、アプリケーションは「ドキュメント」と呼ばれる構造化されたデータを管理し、それに対してクエリを実行することができます。アプリケーションは、「スキーマタイプ」を使って、構造がどのようなものかを定義します。例えば、メッセージは、件名、本文、送信者などのデータを持つスキーマタイプとしてモデル化することができます。
ビルダーを使用してスキーマ タイプのドキュメントを作成し、ストレージに追加します。"body:fruit" とクエリを実行すると、メッセージの本文に用語「fruit」があるすべてのドキュメント検索できます。
Android S では、AppSearch はアプリケーションのデータを他のアプリケーションと安全に共有し、追加のネイティブ ライブラリへのリンクを不要にすることで、アプリケーションのバイナリサイズを削減できる PlatformStorage も提供します。ライブラリがまだ Android S SDK を対象としていないため、現時点では Jetpack で PlatformStorage は使用できません。
デバイス全体の検索に統合するための Android S の中央ストレージ
Room は推奨されているデータ永続化レイヤであり、プラットフォーム上での使い勝手と安全性が向上します。
Room 2.4.0-alpha は自動移行をサポートしています。データベース スキーマが変更された時に、@AutoMigration を宣言して、どのバージョンからどのバージョンに移行したいかを示すと、Room が移行を生成してくれるようになりました。より複雑な移行を行う場合は、引き続き Migration クラスを使用できます。
@AutoMigration
Migration
@Database(- version = 1,+ version = 2, entities = { Doggos.class },+ autoMigrations = {+ @AutoMigration (from = 1, to = 2)+ } )public abstract class DoggosDatabase extends RoomDatabase { }
- version = 1,
+ version = 2,
entities = { Doggos.class },
+ autoMigrations = {
+ @AutoMigration (from = 1, to = 2)
+ }
public abstract class DoggosDatabase extends RoomDatabase { }
Room 2.3.0 安定版では、 Kotlin Symbol Processing が試験的にサポートされ、Kotlinコードのベンチマークでは、KAPTに比べて2倍の速度向上が見られました。また、enumとRxJava3のサポートも組み込まれています。
またRoom は、の実行時にコールバックを提供する QueryCallback クラスが導入され、ロギングなどのタスクがシンプルになりました。また、新しい@ProvidedTypeConverter アノテーションが導入され、型コンバータの作成がより柔軟になりました。
QueryCallback
@ProvidedTypeConverter
WorkManager ライブラリは、アプリが終了またはデバイスが再起動しても実行される延期可能な非同期タスクをスケジュールする方法として Android で推奨されています。すべてのタスクが確実に実行されるようにタスク照合の信頼性が向上し、さらに特定の Android OS バージョン向けのさまざまな回避策も提供されています。
WorkManager の機能の最新バージョンでは、マルチプロセス アプリのサポートが強化されています。作業リクエストのスケジュールを 1 つのプロセスに統合することで、多数のリクエストをスケジュールする際のデータベースの増大を抑制してパフォーマンスを向上するメリットがあります。
Android S SDKを対象としたバージョン 2.7(現在アルファ版)では、Android OS の新しいフォアグラウンド制限への追加サポートに対応しています。詳しくは、Effective Background Tasks on Android セッションをご覧ください。
Android Studio Arctic Fox で利用可能な Background Tasks Inspector は、最新のライブラリを使うと WorkManager のジョブを簡単に表示してデバッグできます。
Background Tasks Inspector
アプリ内の目的地間を移動するための Jetpack のフレームワークである Navigation ライブラリは、複数のバックスタックをサポートし、ボトムナビゲーションバーのように目的地が同じ深さにある場合にも簡単に対応できるようになりました。
Macrobenchmark ライブラリは、アプリの起動やスクロール パフォーマンスなどの統合された動作まで、Jetpack のベンチマーク範囲を拡張します。このライブラリは、継続的な統合テストでメトリクスを追跡するためにリモートで使用することも、プロファイリングの結果をAndroid Studioから表示するためにローカルで使用することもできます。詳細については、Google I/O のセッションをご覧ください。
Google アシスタントともっと密接した統合を希望しているデベロッパーのために、Google Shortcuts ライブラリは、既存の ShortcutInfo クラスを通じて、Google アシスタントやその他の Google サービスにアクションを公開する方法を提供します。
ShortcutInfo
ShortcutManager を介して一度に最大 15 個のショートカットを送信し、他のサービスの中から Google アシスタントに表示させ、音声やその他のインタラクションで利用できるようにします。
ShortcutManager
これを実装するには、ショートカットに Intentと機能バインディングを定義します。このバインディングは、Google サービスがユーザーに提供する最善の方法を見出すのに役立つ重要な情報を提供します。
// expose a "Cappuccino" action to Google Assistant and other servicesShortcutInfoCompat siCompat = ShortcutInfoCompat.Builder(ctx, "id_cappuccino") .setShortLabel("Cappuccino") .setIntent(Intent(ctx, OrderCappuccino::class.java)) .addCapabilityBinding( "actions.intent.ORDER_MENU_ITEM", "menuItem.name", asList("cappuccino") ) .build()ShortcutManagerCompat.pushDynamicShortcut(ctx, siCompat)
ShortcutInfoCompat siCompat =
ShortcutInfoCompat.Builder(ctx, "id_cappuccino")
.setShortLabel("Cappuccino")
.setIntent(Intent(ctx, OrderCappuccino::class.java))
.addCapabilityBinding(
"actions.intent.ORDER_MENU_ITEM",
"menuItem.name",
asList("cappuccino")
.build()
ShortcutManagerCompat.pushDynamicShortcut(ctx, siCompat)
アプリ内でユーザーが作成したすべてのコンテンツには 🎉 が含まれ、最新の絵文字をサポートすることは、あなたのアプリまたはゲームを ✨ にするために重要な要素です。API 19以降で最新の絵文字をサポートする EmojiCompat ライブラリは、従来の :emoji:emoji アーティファクトに代わる新しいアーティファクト emoji2:emoji2 に移行しました。新しい emoji2 ライブラリでは AppStartup ライブラリを使用た 🪄 自動設定が追加されています( 🐻❄️を表示するためのコード 👩🏿💻 は必要ありません)。
emoji2:emoji2
emoji2
AppCompat では、AppCompat 1.4 以降から emoji2 が追加されています。あなたのアプリまたはゲームがAppCompat を使用している場合、ユーザーは追加設定なしで最新の絵文字 ⭐ を見ることができます。AppCompat を使用していないアプリまたはゲームは emoji2:emoji2-views を追加できます。カスタム TextViews の場合は、emoji2:emoji2-views-helpers のヘルパーを使用するか、AppCompat のビューをサブクラス化することで、最新の絵文字をサポートすることができます。
emoji2:emoji2-views
TextViews
emoji2:emoji2-views-helpers
Jetpack Compose は、Android のネイティブ UI 開発用の最新ツールキットです。Android での UI 開発をシンプルにし、高速化します。Jetpack Compose は現在ベータ版で、7 月に安定版に移行する予定です。ここに掲載されているライブラリや皆さんがすでに使用している可能性のあるライブラリの多くは、Jetpack Compose との統合を目的とした機能を導入しています。Activity から ViewModel、Navigation、Hilt まで、これらすべてのライブラリを使うと、アプリに Compose をスムーズに導入できます。これらの使い方に関する詳細については、この Google I/O セッションをご覧ください。
Jetpack は、折りたたみ式デバイス、大画面デバイス、Wear デバイスなど、さまざまな形状での作業をしやすくします。大画面デバイスに対応するアプリ開発のための新しいガイドラインを導入し、、WindowManager や、SlidingPaneLayout などの Jetpack ライブラリを改善しています。詳しくは、こちらのブログ記事をご覧ください。
WindowManager
SlidingPaneLayout
以上、Jetpack の新機能を(比較的)簡単にご紹介しました。各ライブラリのアップデートの詳細については AndroidX リリースノートをご覧ください。また、Google I/O セッションでは、一部のライブラリについての詳細についてご説明しています。
Reviewed by Yuichi Araki - Developer Relations Team and Tamao Imura - Developer Marketing Manager, Google Play