この記事はプロダクト マネージャー、Mayank Jainによる Android Developers Blog の記事 " Android Studio Giraffe is stable" を元に翻訳・加筆したものです。詳しくは元記事をご覧ください。
2023 年 7 月 25 日、Android Studio Giraffe 🦒 (英語) の安定版リリースについてお知らせします。Android Studio は、Android アプリ開発の公式 IDE です。
今回のリリースでは、IntelliJ プラットフォームを 2022.3 にアップグレードし、Android Studio のまったく新しい見え方と使用感や、ライブ編集の改善、Compose アニメーション プレビュー、新しい Device Explorer、新しい SDK アップグレード アシスタント、Gradle ビルド スクリプトでの Kotlin DSL の利用などを導入しています。ここでは、Android Studio Giraffe 🦒 でどのようにデベロッパーの生産性が向上するかについて説明します。
10 年以上前に初期バージョンをリリース (動画/英語 - 日本語の自動字幕あり) して以来、フィードバックを送っていただいている、Android Studio をご利用の皆さんに感謝いたします。さっそく最新の安定版をダウンロード (英語) してください。これからも、Android アプリ開発に特化した最高クラスの統合開発環境 (IDE) を提供するという約束を果たしていきたいと考えています。
Android Studio の新しい UI (プレビュー)
大きな期待を集めていた IntelliJ プラットフォーム アップデートと合わせて、Android Studio Giraffe の『新しい UI』と呼んでいる見え方のプレビューを共有できることをうれしく思っています。テーマを再設計した目的は、見た目の複雑さを軽減し、重要な機能へのアクセスを簡単にし、必要に応じて複雑な機能を表示することにあります。その結果、モダンでクリーンな見え方と使用感が実現されています。
ユーザーやその他の IntelliJ ベースの IDE からのフィードバックを集め、以前の UI を完全に置き換えられるようにするため、IntelliJ 2022.2 で新しい UI を早期プレビュー版として初めてリリースしました。その後、IntelliJ 2022.3 でベータ版となり、多くのバグの修正や改善が行われました。
Giraffe リリースでは、新しい UI の採用を始めます。デフォルトのメイン ツールバーや Android 用のツール ウィンドウ構成の最適化、アイコンのスタイルの刷新など、いくつかの Android Studio 固有の変更点も追加されています。Google では、 この新たなデザインの方向性に期待して、Hedgehog リリース以降でも導入を続ける予定です。
新しい UI を使うには、[Settings] > [Appearance & Behavior] > [New UI] から有効化します。すべての変更点の一覧は、IntelliJ の新しい UI のドキュメントをご覧ください。
IntelliJ から採用した新しい UI
新しい診断とバグレポートのツール
新しい UI を試すときは、新しい診断とバグレポートのツールから詳細なフィードバックをお送りください。関連するログファイルがすでに添付され、簡単にバグを報告できるようになっています。新しいバグレポート ツールは、[Help] > [Collect Logs and Diagnostic Data] から利用できます。
Device Explorer のアップデート
新しい UI と合わせて導入されるのが、Device Explorer (以前のバージョンの Android Studio での呼称は Device File Explorer) のアップデートです。Device Explorer では、ファイルとそれに関連するアクションが [Files] タブにまとめられています。さらに、新しい [Processes] タブでは、接続されているデバイスのデバッグ可能なプロセスを一覧表示でき、そこからプロセスを選択して終了または強制停止したり、指定したプロセスにデバッガをアタッチしたりできます。
ライブ編集でコンポーザブルをリアルタイムに更新
ライブ編集を使うと、Android エミュレータや実機のコンポーザブルをリアルタイムに近い形で更新できます。コンポーザブルを編集すると、アプリを再デプロイすることなく、実行中のデバイスで UI の変更を確認できます。
コードの記述とアプリのビルドというコンテキストの切り替えを最小限にとどめることができるので、中断することなく、コードの記述に長い時間集中できます。ライブ編集を試すには、[Settings] > [Editor] > [Live Edit] から有効化 (英語) し、Android Gradle プラグイン (AGP) 8.1 以降と Jetpack Compose ランタイム 1.3.0 以降を使用します。
Compose アニメーション プレビュー - アニメーション サポートの拡大 Compose アニメーション プレビューがたくさんの追加 Compose API をサポートするようになりました。(updateTransition と AnimatedVisibility に加えて)animate*AsState、CrossFade、rememberInfiniteTransition、AnimatedContent に対応しました。(上記リンク全て英語)また、新しいピッカーが追加されるので、列挙型やブール型以外の状態を設定し、正確な入力を使って Compose アニメーションをデバッグできるようになります。サポート対象のすべての Compose Animation API で、再生、一時停止、スクラブ、スピードの調整が可能です。
Compose アニメーション プレビュー - アニメーション サポートの拡大
Android SDK アップグレード アシスタント 新しい Android SDK アップグレード アシスタントを使うと、targetSdkVersion (アプリがターゲットとする API レベル) のアップグレードに必要な手順を IDE の中で直接確認できます。さらに、Android デベロッパー サイトからアップグレード関連のドキュメントを直接取得してツール ウィンドウに表示してくれるので、ブラウザと IDE を行き来する必要もなくなります。移行の各手順では、互換性を破る重要な変更とその対処方法がハイライトされ、すべての変更点の一覧から自分のアプリに関連する手順だけを絞り込んで表示することもできます。
Android SDK アップグレード アシスタントは、[Tools] > [Android SDK Upgrade Assistant] から利用できます。
Android SDK アップグレード アシスタント
ビルドシステムの改善
Gradle ビルド スクリプトの Kotlin DSL
Kotlin は可読性が高いだけでなく、コンパイル時のチェックや IDE サポートも優れています。Android Studio Giraffe では、Gradle ビルド スクリプトで Kotlin DSL が正式サポートされます。つまり Kotlin は、Jetpack Compose の UI などのプロジェクト コードだけでなく、ビルド スクリプトの編集でもデフォルトの言語となります。
Android Studio Giraffe 以降で新しいプロジェクトやモジュールを作成する場合は、デフォルトで Kotlin DSL が使われます。既存のビルドを移行したい場合は、Kotlin DSL 移行ガイドをご確認ください。
この改善にあたっては、Gradle と JetBrains のチームと連携して作業を進めてきました。詳しい内容については、関連するお知らせが Gradle ブログ、JetBrains ブログに掲載されています。
さらに、TOML ベースの Gradle バージョン カタログも試験運用版サポートとして追加します。これは、1 か所で依存関係を一元管理し、モジュール間やプロジェクト間で依存関係を共有できる機能です。Android Studio では、エディタの提案、プロジェクト構造ダイアログとの連動、新規プロジェクト ウィザードを通して、簡単にバージョン カタログを設定できます。
Gradle 同期中のダウンロード情報
予期しない依存関係がダウンロードされることによって同期のパフォーマンスが低下しているのではないかと考えている方のため、新しい同期ツール ウィンドウに、依存関係のダウンロードにかかった時間の概要表示と、リポジトリごとのダウンロードの詳細表示を追加します。この表示は、同期の進行に合わせてリアルタイムに更新されます。非効率なリポジトリの設定方法になっていないかを確認することもできます。
アプリ別の言語サポートの自動化
通常、多言語ユーザーはシステム言語を英語などの 1 つの言語に設定します。しかし、特定のアプリでは、オランダ語、中国語、ヒンディー語などの別の言語を選択したいこともあります。Android 13 でアプリ別の言語設定が導入されましたが、Android Gradle プラグイン 8.1 以降では、プロジェクトのリソースに応じて自動的にこれをサポートするようにアプリを設定できます。
選択したモジュールをビルドするツールバー ボタン
Android Studio Giraffe では、ツールバーから選択したモジュールをビルドするオプションを選択することで、現在作業中のモジュールのみをビルドできます。この新しいオプションを使うと、必要以上のものをビルドすることなく、記述したコードがコンパイルできるかをチェックできます。詳細はこちらをご覧ください (英語)。
まとめ
この記事の内容をまとめます。Android Studio Giraffe には、以下の機能強化や新機能が搭載されています。詳細を知りたい方は、リリースノートの詳しい説明をご覧ください。
IDE の機能強化
IntelliJ プラットフォーム 2022.3 へのアップグレード:たくさんの機能とバグの修正を含む
Android Studio の新しい UI:Android Studio で IntelliJ のモダンなデザイン言語からたくさんの改善を採用
Device Explorer のアップデート:2 つの新しいタブを提供: [Files] と [Processes] から、デバッグ可能なプロセスの一覧表示、プロセスの終了および強制停止、デバッガのアタッチが可能
新しい診断とバグレポートのツール:関連するログファイルがすでに添付され、Android Studio のバグを簡単に報告
コーディングの生産性
ライブ編集でコンポーザブルをリアルタイムに更新:リアルタイムにコンポーザブルを更新でき、コンポーザブルを編集すると、アプリを再デプロイすることなく、実行中のデバイスで UI の変更を確認可能
Compose アニメーション プレビュー - アニメーション サポートの拡大:たくさんの Compose API がサポートされることに加え、新しいピッカーが追加されるので、列挙型やブール型以外の状態を設定し、正確な入力を使って Compose アニメーションをデバッグ可能
Android SDK アップグレード アシスタント:targetSdkVersion (アプリがターゲットとする API レベル) のアップグレードに必要な手順を Studio の中で直接確認
Gradle ビルド スクリプトの Kotlin DSL:Gradle ビルド スクリプトで Kotlin DSL が正式サポートされたことで、Kotlin がプロジェクトのコード、Jetpack Compose による UI、ビルド スクリプトでも利用できる単一のデフォルト言語に
Gradle 同期中のダウンロード情報: 依存関係のダウンロードにかかった時間の概要表示と、リポジトリごとのダウンロードの詳細表示
アプリ別の言語サポートの自動化:AGP がアプリ別の言語設定を自動構成
選択したモジュールをビルドするツールバー ボタン: ツールバーから選択したモジュールをビルドする選択肢を選ぶことで、現在作業中のモジュールのみをビルド
さっそく Android Studio をダウンロード
さっそく Android Studio Giraffe (英語)🦒 をダウンロードして、ワークフローに新機能を組み込みましょう。いつものように、気に入った機能や問題点、新機能の提案などのフィードバックは大歓迎です。バグや問題を見つけた方は、問題を送信してください。また、既知の問題もご確認ください。Android 開発の最新情報については、Twitter や Medium、YouTube で Google Play をフォローすることもお忘れなく。
Reviewed by Mari Kawanishi - Developer Marketing Manager, Google Play